三台目の無帰還アンプ作製 その8 エピローグ

 三台目の無帰還アンプの作製も最終となりました。
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 スーパー・エミッタ・フォロワを基調とした低歪のアンプは、アナログICをディスクリートで作ったような回路で、あまり見かけない回路で動作が解り難い点があります。全段BTLでクロスオーバー歪を最小とする工夫がされており、オールオーバーの負帰還を掛けなくても、充分に低歪のアンプに仕上げられています。
 バランス取りに、使用する10倍以上の半導体の中から、バランスの揃ったモノを厳選する必要が有り、極めて、個性的でわがままなアンプと言えます。受動部品、コネクタ等の入手と実装は容易でしたが、最終の調整は、高度な技術と環境を必要としますので、市販のアンプ、製作キットに無い難産さがありました。
 保護回路も、一般的な電磁によるリレーではなく、ホトMOSを使った無接点・メンテナンスフリーの高速保護回路となっています。半導体のリレーは、オーディオに向かないとの定説がありますが、今回、このアンプの音を聴くと、そのような都市伝説は、誤っていると思いました。そう言えば、Jeff Rowrand等は、icePower、HypexのD級アンプを用いていますが、総てホトMOSリレーで保護回路を構成されていますね。
 このアンプは、音も良く先進的なデザイン・フィロソフィーで出来ており、一生の宝物になりました。

体力測定の結果
ゲイン・・・・・・・・・・・:20dB
歪率(THD)・・・・・・:0.008%以下@1Wrms 1kHz
出力・・・・・・・・・・・・:10WPeak(Vcc17.3V)ノンクリップ
周波数特性・・・・・・:0Hz~300kHz(-3dB)
バイアス電流・・・・・:約200mA
ノイズ・・・・・・・・・・・:0.1mV(入力オープン)
ダンピングファクター:200以上
連続出力・・・・・・・・:1Wrms
負荷インピーダンス:8オーム
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フロントパネルの取り付け
 音が良ければ、気持ち良く最終工程のお化粧に入れます。
 6mm厚のジュラルミンパネルを入手して、サンドペーパーでヘアーライン加工を行いました。そして、防汚防食剤として、TOAインクララックを塗布しました。
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パネルのシャシーへの取付け
 当初螺子止めを想定してましたが、今回は、定番のスイスのチバ・ガイギー社(CIBA‐GEIGY AG)が開発したアラルダイトのゆっくり硬化タイプを用いて接着しました。
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パイロットLEDランプ
 パイロットランプとして、白色のLEDとしましたが、輝度が高すぎてパイロットランプとして不適切な為、敢て古い緑のLEDに交換して、落ち着いたデザインとなりました。

クーリングの穴
 10Wのアンプとしてアイドリング電流を200mA程流している為、適度に熱を帯びます。室温26℃状態で、通常時に聞かない様な大音量を出力すると、56℃になり、盛夏の室温が36℃の場合、66℃程の温度が想定されます。IEC規格では金属部が40℃、非金属部が60℃、の温度上昇値に定められています。このアンプの上昇値は30℃ですので全く問題ありません。
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プロジェクト
 一定の成果が得られたので、この無帰還アンプ・プロジェクトは、これにて一段落とします。 アンプの設計と、基板、部品の準備、調整を行っていただきました、K氏、I氏、O氏に感謝いたします。
 末永く大切に使用させていただきます。

三台目の無帰還アンプ作製 その7

関東三土会に出品しました

 関東という言葉の響き嫌いです、例えば、「関東軍」とか、「関東支社」、「関東炊き」とか、古くて封建的な臭いがします。

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 小電力分部の抵抗は、1/8Wの米粒サイズのものです。

爆音での再生
 5月21日土曜日に、ファイン・チューニングした無帰還アンプを手作りアンプのオフ会に持ち込み、音出しをさせていただきました。当初、保護回路の感度が若干高く、83dBのスピーカーで、いじめると、保護回路が働き気絶する事がありました。そこで、設計者のI氏に相談して、保護回路の時定数の変更を行いました。結果は上々で、問題無く爆音で連続運転が可能となりました。
 本来は、正弦波か矩形波で、負荷試験を長時間に渡り行いたかったのですが、正弦波でフルパワーにすると、ヒートシンクが、想定以上に熱くなるので、普通の音楽で負荷試験を行いました。音楽負荷の場合は、正弦波の負荷を100%とした場合に対して、40%程度の負荷になるとの事です。

肝心な音
 問題なく音だしが出来て、なによりです。
 今回、音楽ソースは、MIE JOKÉ sings BALLADS and other love songsから、コールポーター作曲 So in loveで、情家みえさん、ピアノフォルテは後藤浩二さんの10分32秒の曲です。 このアルバムの詳細は、ここ
 複数の曲を細切れに聴いていただく方法もありますが、今回のアンプは完成度が高いので、女性の声とピアノと言う、オーディオ機器として再生が難しい部類の曲を選びました。結果として、ピアノの鍵盤に指が当たる音が聞えるほどリアルで、曲を聴き入ってしまいました。
 終わりに、クラシックの再生リクエストをいただきましたが、良い音源の持ち合わせが無く、適当な曲を再生しましたが、弦の音が団子状態で最悪の状態でした。これは、フォステクス製の旧式フルレンジ・スピーカーの分解能が低いのが原因かと思われます。思い起こせば、過去に手作りアンプの会のスピーカーで、クラシックを聞いたことが、極めて少なかったと思います。

その他
 今後、マルチアンプの中音域に投入する予定ですが、音が良いので、高音域用にもう一台作ってみたいと思い始めました。
 このブログを書きながら、環境音楽として、このアンプとRogers LS3/5でWebRadioのJazzGroveを聴いてます。

三台目の無帰還アンプ作製 その6

 電源電圧と容量のアップ

 電源トランスの要求仕様が、18V/50VAであったところ、誤って15V/40VAのトランスを購入したため、手作りアンプ会員I氏に暫定的な定数で、その電圧で動作する様に、バイアスを調整していただきましたが、本来の18V/60VAのトランスが、RSコンポーネンツの海外在庫から本日入手できたので、交換を行いオリジナルのバイアス、安定化電源のスレショルドを戻しました。
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 この独逸製Block社のトロイダルトランスは、60VAの規格ながら、直径:80φ、高さ:38mm の大きさです。 トロイダルトランスの資料はここです。カナダのPlitron社より多品種で廉価です。

トランス以外の改善点
 基板をヒートシンクから外すので、その時にしか出来ない、電源のコンデンサー容量の増大と熱伝導グリースの充填を行いました。チャンネルあたり、追加した容量は22,000μFですので、合計32,000μFになりました。
 残念ながら、取付け方は美しくないですね。
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 電源スイッチをパイロットランプ付きのシーソースイッチに交換を考えましたが、シャシーに四角い穴を空けて、その加工時の切削屑が、基板に架かり事故になる事を避ける為に、取付ける形状が同一のロック式スイッチに改めました。

トランスを交換した結果
 アンプの動作が安定した様な気がします。元々大出力を出す為のアンプでは無いのですが、結構、大音量でも保護回路が働かす、安定しています。

肝心な音
 トランスを最適化する事により、本来の性能が得られた様です。
 低音の分解能が、大幅に向上するとともに、音場感が増した様です。今更ですが、やはりアンプは電源が肝ですね。
 このアンプでの最大の収穫は、SNRが素晴らしく良い事です、自画自賛ですが、ハムのトラウマから生還できた様です。
 ゲインを最大にして、トゥーイータに耳をくっ付けても、全く何も聞えません

次の計画
 フロントパネル様に購入してある、6mm厚のジュラルミンを加工して、そろそろ取り付けて、完成させたいと思います。
 その前に、最終的な点検と調整、体力測定を行い、このプロジェクトを終わりにしたいと思います。
 回路設計、基板設計、基板の準備を行っていただきました、手作りアンプの会員である、I氏、テツ氏、K氏に感謝いたします。

三台目の無帰還アンプ作製 その5

 調整を終えて、連続運転試験です。

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 I氏に無帰還アンプの調整のお願いをしていましたが、急遽、11日夕刻から、I氏のオフィスにて、調整を行っていただけることになりました。
 場所は中野区にあるI氏のオフィスで、測定器や、治具、部品が揃っていて、男の秘密基地といったところです。
 調整中に問題点が数点ありました、その原因の総ては、私の至らぬ点が原因なのですが、その場で応急処置と対策を行っていただき、音出しをする事ができました。
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現在の状況
 昨日、12時頃から連続運転を行い16時間以経過していますが、全く問題なく美しい音楽を奏でています。ヒートシンクの温度上昇は、室温24.4℃で、プラス11.3℃で、ホンノリ暖かい状況で35.9℃です、盛夏の34℃でも全く問題なく使える状況で安心です。この状況で、5月の三土会前日まで、可能な限り連続運転を行う事とします。

問題点
 電源トランスの選定を誤り、18Vacを用意するところ、15Vacで組んでいました、安定化電源への供給電圧が不足していて、高負荷の時、安定化電源の安定効果が薄らぐので、早速、18V/60VAのトランスに交換する事にしました。それに合わせて、ゼナーダイオードと抵抗をオリジナルの設計に戻します。
 又、調整中に不良の半導体が三個程有りました、原因は、ハンダ付けに要する時間が長く、半導体が痛んだ様です。原因としては、今回の製作から、自動温度調整のハンダ鏝を用いましたが、使っていて時折、熱の伝わりが悪く母材に鏝を当てる時間が長いことがあります。小手先のメッキに問題が有る様に思えます。今後、このハンダ鏝は半導体のハンダ付けには使わない事としました。

肝心な音
 音源をWebRadioとして、dam1021 R-2R DACと繋ぎ聴き込んでいますが、極めて自然で落ち着いた聴きやすい良い音です。音量の調整を、ポテンショメータを使わずに、dam1021 R-2R DACのデジタルボリュームを用いて、入力インピーダンスが一定している為に、音質面で良い結果が得られていると思われます。

体力測定
 簡単な体力測定を行った結果、周波数特性、位相特性共に、1Hzから300kHz付近までフラット(-3dB以内)、歪特性として設計目標値は0.004%ですが、測定環境の限界0.02%が得られました。無帰還アンプ(オールオーバー)とは思えない性能で、出力は別として、アキュフェーズA200の音質と性能を軽く凌駕していると思います。

三台目の無帰還アンプ作製 その4

 電源トランスを入手して、実装が終わりました、これから調整です。
 
 安定化電源のPchパワーMOSFETの放熱容量が、連続運転時に不足する旨のアドバイスをいただきまして、急遽ヒートシンクを倍の大きさにして、これで安心して大きな音が出せそうです。ヒートシンクは、5mm厚の銅製で、信越化学工業のオイルコンパウンド(5.5W/m-K)をシャシーとの間に塗布して熱伝導を良化しています。
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スパーク・キラーの追加
 トロイダルトランスの突入電流(ラッシュカレント)は、電源投入時にコアの磁気飽和が原因で数十アンペアの電流が一瞬流がれます。それにより、定格内のフューズがとんだり、電源スイッチが熔解したり、カーボンで接点不良が生じる可能があるので、岡谷電機製のスパークキラーを取り付けました。

フューズの結線
 インレットに繋がる方をフューズホルダの先端として、交換時にホルダーの金属分部に指が触れても感電しないようにしました。

平衡・不平衡の入力
 平衡入力(キャノン)のみとして、不平衡の場合は、変換コネクターを用いる事に割り切りました。

ヒートシンクのコンパウンド
 銅板のヒートシンクが、手垢で汚かったので、真鍮磨きでコンパウンドしました。その後、音とは無関係ですが、その輝きを保つ為に防錆処理を行いました。

今回使用したケーブル類
 電力線:テフロン線AWG16
 信号線:テフロン線AWG24

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今後の予定
 実装が終わって、一寸一息です。音が出たら5月の三土会に持ち込み、音出しを行いたいと思います。
 出来たら体力測定を行い、可能であるなら、もう一セットアンプを作ってみたいと思います