リレー式アッテネーター 着手 その1

 かねてオーディオの懸案事項の一つとして、マルチアンプのボリュームがあり、それもバランス伝送での実現があります。マルチアンプのボリュームについては、BurrBrown(T.I)製のPGA2310を用いた8チャンネルの電子ボリュームの作製に始まり、カーボン・ポテンショメータを8連に改造して8チャンネル連動のポテンショメータをも作りましたが、どの方法も満足できずRMEのTotalMix FXデジタル・ミキサーを用いたデジタルボリュームでお茶を濁してきました。アンバランスの8チャンネル規模でしたら、東京光音電波製あるいは、米国Goldpointのアッテネータを用いれば、容易に実現できますが、何れの方法もリモートコントロールとバランス伝送を条件とすると、なかなか実現できないのが現状です。しかしWebを漂流して調べると世界に、特に欧州にはコアなオーディオユーザーが存在して、リレー(継電器)を用いたバランス型ボリュームが数多く存在している事が判明しました。そこで、2018年は、長年の課題でした、リレー式R2Rシャントアッテネーター12チャンネル(バランス6チャンネル)を実現する事を目標としました。これが実現すると、パワフルなデジタルチャンデバを、思うところ無く採用できて、最終目標のPCとの決別の布石となります。

リレー式アッテネーター
 チャンネル毎に6個のリレー(bit)を用い、1dB減衰で×63ステップのアッテネータを実現する事が可能ですが、3Wayでバランス型となると、3Way×2(バランス)×12個(63ステップ)により72個のリレーが必要となります。又、それに見合った高精度の抵抗が必要となります。特に、減衰に用いる抵抗は、最大の減衰時点で6個の抵抗がシリーズ接続となるので、精度と音質面を決定する重要な要素となります。

バランスはそんなに重要か
 たかが3mの伝送路にバランス伝送が必要でしょうか?、又、定インピーダンスのアッテネータが必要なのでしょうか、バランス伝送と、定インピーダンス化は、現状のシステムで実現しているので、現状よりクオリティーを落とさずに、マルチボリュームを実現するのが、最終目標です。

リレー式バランス型アッテネータの現状
 海外では以下の様にかなりの件数で探し当てる事ができました。
-Relay Attenuator
http://www.elma.com/en/products/rotary-switches/audio-solutions/product-pages/relay-attenuator-detail/

-RelaiXedSMD -- DIY balanced pre-amplifier
http://www.eijndhoven.net/jos/relaixedsmd/index.html

-Audio Volume Relay Attenuator with IR Control
http://www.vaneijndhoven.net/jos/switchr/design.html

-Volume attenuator with input selector and IR remote control
http://www.diysoundlab.com/

-The δ1 relay-based R-2R stereo attenuator
http://www.amb.org/audio/delta1/

-R-2R / SHUNT VOLUME CONTROLLER
http://www.vicol-audio.ro/volume-controller.php

-TentLabs Volume control
http://www.tentlabs.com/Products/page31/page31.html

プロトタイプ
 以下の様に、シンプルな外観として、音量調節のノブと減衰値の逆数を表示するLED程度に留めました。LEDではなく、白のアイトロン(蛍光表示管:Vacuum fluorescent display)が希望ですが、ドライブに高電圧を要するので、今回は避けました。

フォトショップでシミュレーション
relay_vol_Prototype.jpg

リレー式アッテネーターの要件
 1.アッテネータ抵抗の切断はリレー式とする。
 2.赤外線(IR)リモコンでNECフォーマットとする。
 3.減衰のステップは最低1dB以下として、最大63dBの減衰とする。
 4.バランス型で最低6チャンネルの回路を設ける
 5.リモコンの他フロントパネルのロータリーエンコーダでも加減を可能とする。
 6.減衰に用いる抵抗は音質を考慮して、Vishay無誘導金属皮膜抵抗とする。
 7.電源はAC電源供給として、トランスは低漏れ磁束のトロイダル型とする。
 8.入力/出力コネクタは、キャノン又はTRSとする。
 9.可能な限り小型に作る
 10.ヒューズは設けるが電源スイッチは無しとする。
 11.リレーの動作音が極力漏れないようにインナーケースを設ける。
 12. キャパシターは、導電性高分子固体電解コンデンサ(OSコン)とする。

使用する抵抗
 6個×4×12チャンネルで、288の指数関数の抵抗が必要となります。
 R-2Rに用いる固定抵抗は、低ノイズ高精度のVishayのMELF形無誘導金属皮膜固定抵抗を用います。
VIS-2.jpg

アッテネータ基板
 白い箱状のリレーは、テルコーディア(旧ベルコア)の規格品でデファクトスタンダードの高品質オムロン製の超小型2接点ラッチング・リレー(G6KU-2P-Y)と、その前面に並ぶVishay無誘導金属皮膜抵抗です。
DSC02266.jpg

Left/Right(2チャンネル)の基板を上下二段でバランス伝送を形成します。
右上のXH-2Pのポストとフォトカプラ817は、ペリフェラル電源のリモコン用端子です。
DSC02271.jpg

基板の裏面に制御用のPICとリレーの制御IC)があります。ビアの代わりを成すソケットで、上下の基板を接続して平衡回路を構成します。
DSC02270.jpg

Relay Position
以下の様に減衰値にあわせて、指数関数の抵抗を6個のリレーをOn/Offします。又、-64dB以上の減衰は、ミュートリレーで∞値とします。
Disp  mute   6 Relays
-dB  Relay   Status
0      1    111111
1      1    111110
2      1    111101
3      1    111100
4      1    111011
5      1    111010
6      1    111001
7      1    111000
8      1    110111
9      1    110110
10    1    110101
11    1    110100
12    1    110011
13    1    110010
14    1    110001
15    1    110000
16    1    101111
17    1    101110
18    1    101101
19    1    101100
20    1    101011
21    1    101010
22    1    101001
23    1    101000
24    1    100111
25    1    100110
26    1    100101
27    1    100100
28    1    100011
29    1    100010
30    1    100001
31    1    100000
32    1    011111
33    1    011110
34    1    011101
35    1    011100
36    1    011011
37    1    011010
38    1    011001
39    1    011000
40    1    010111
41    1    010110
42    1    010101
43    1    010100
44    1    010011
45    1    010010
46    1    010001
47    1    010000
48    1    001111
49    1    001110
50    1    001101
51    1    001100
52    1    001011
53    1    001010
54    1    001001
55    1    001000
56    1    000111
57    1    000110
58    1    000101
59    1    000100
60    1    000011
61    1    000010
62    1    000001
63    1    000000
64    0    000000

ロータリーエンコーダー
 エンコーダーとリレーのチャタリングの防止を考慮して光学式(無接点)のコパル製にしました。リレーを駆動する場合は必須と考えました。以下が、コパル(日本製)のロータリーエンコーダー(REC20D25-201-1)で、流石測定器用で、極めてステディーな動作をします。
DSC02283.jpg

音量調整のノブ
 比較的大型のノブを用い使い易くします。ロータリーエンコーダーの場合、左が良さそうです。
KNOBS.jpg

今後の予定
 部品の総てが揃ったので、これからユックリと時間を掛けてケーシングを行います。その後、脱PCの手始めとして、dbx DriveRack VENU360-D(Complete Loudspeaker Management System with Dante)を導入して、USBを用いたパソコン・チャンデバを主軸から外す予定です。12チャンネルのリレーによるボリューム(アッテネータ)は、事例が無いので、とても楽しみです。

デジタルボリュームとポテンショメータの音の違い

 マルチビットDAC(dam1021)にデジタルボリュームが搭載されており、その音質が気になっていました。又、無帰還アンプを作製してその入力の音量制御をどの様に行うか、思案中でしたが、今回作製した無帰還アンプは、全段差動アンプであり、マルチビットDACの出力も差動ですので、それを生かさない手は無いことに気づきました。
DSC01634.jpg

カーボンのポット
 その差動の信号を音量制御の為だけにアンバランスとして、カーボンのポテンショメータで制御するのも如何なものかと思い、DACのデジタルボリュームで音量を調整する事にしました。今まで、デジタルボリュームは、データビットをシフトして、桁落ちさせて音量を調整するので、音のリアル感が殺がれると思い、使用を避けて来ました。

レガシーな、カーボンのポット(アンバランス)
DSC01638.jpg

デジタルボリューム
 デジタルボリュームを使ってみての印象は、今回の音の比較で考えが大きく変りました。今まで、カーボンのポテンショメータを使って、それ程音の劣化を感じなかったのですが、同じ環境で、デジタルボリュームとポテンショメータを比較すると、デジタルボリュームの方が、変な音に色付けがされず、とても自然な音です。ビットシフトによる音数の減少は、取るに足りない心配であった事が解りました。

電子ボリューム
 以前に作製した、TIのPGA2311PAを用いた8チャンネルの電子ボリュームを引っ張り出して、デジタルボリュームと聞き比べました。ハッキリ言って、カーボンのポテンショメータと大差有りません、ギャングエラーが無い分、左右の定位が良いかなと感じる程度です。

結果
 やはり、デジタルは、デジタルボリュームで制御するのが正解で、可能な限りフルボリュームで聴く事が出来るレベル合わせを行う事が肝心であり、ADとDA分部が連動してデジタルボリュームで制御されれば、高いSNRが確保できると思いました。

電子ボリューム4Wayの音出しその3(最終)

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 電子ボリュームのオペアンプを六個程換装して、音を比較して聴いてみました。
 LME49720HA、LT1364CN8、AD822AR、OPA2604と交換して聞き比べましたが、どれも優劣を付け難く、やはりオペアンプの色が強く付きます。又、どのオペアンプに換えても、音が眠たくなり鮮度が落ちます。
 電子ボリュームでは無く、アッテネータ(定インピーダンス)の方が良いと思います。
 最後に、制御用のフェーダーを一寸高級な東京光音電波製のコンダクティブ・プラスチック・フェーダーに換えて、納戸行きとしました。
 電子ボリュームの評価ですが、明確に言えることは「何も無いほうが音が良い」これが結論です。
 

電子ボリューム4Wayの音出しその2

 電子ボリュームのリモートコントロール化の為に入手したリモコンのポットです。
 日本のALPS製(RK168)で、50KOhm/Aカーブです。この六連のポットはアキュフェーズのCX-260等で使われており、廉価でごく普通のカーボン抵抗で、チャンネル間では数%の誤差(ギャングエラー)が有ります。
 4連のポットをモータで回して、2チャンネルを音量調整に使い、他の2チャンネルは、制御と、減衰値の表示に使っています。
DSC04039.jpg
 右上:1/99の数値で音量?を表します。  左下:赤外線受光部  右下:リモコン
 A38と表示していますが、4チャンネルの入力セレクター(A,B,C,D)でAを選択中で、38/99の音量を表しています。

 肝心の利用方は、このリモコンのポットの可変抵抗値で、電子ボリュームを制御する魂胆です。
 しかし残念な事に、求めている制御用のポットは、Bカーブであり、このリモコンポットはAカーブなのです。使えないことはないのですが、ドッカンボリュームの恐れが想定されます。そのときはAPLSの通販でBカーブのポットを購入して付け替えるか、それとも、いっそのこと、リモコンは止めてしまう選択も考えています。
 若し使えたとしても、動作が緩慢で、ボリュームのアップ/ダウンにストレスが生じます。最終的な採否は、音を聴いて投入する価値が有るか否かで決定するつもりですが、今のところ、否定的です。

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電子ボリューム4Wayの音出しその1

 電子ボリュームを正月が明けて余裕ができたので、完成させました。
 今回は、筐体は実験のために簡易に作り、音の確認に重点をおきました。
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音の印象
 組み上げて、最初の音の印象は、結構良いと感じました。
 AVアンプの様な音を連想していましたが、低ノイズで、割と存在感がありません。
 カーボンのポテンショメータと比較しましたが、電子ボリュームの方が良かったので、ほっとしました。
 試しに、4チャンネルをシリーズに接続して、電子ボリュームの個性を誇張して音を聴きましたが、それほど酷くはない様です。
 この電子ボリュームに使われている、バーブラウンの電子ボリュームPGA2311A(電源5V)は、Jeff Rowland Coherenceに使われたCirrus Logic IncのCS3310(電源12V)に照準を合わせて作ったピン互換の電子ボリュームチップです。しかし、電源電圧の5Vは決定的にダイナミックレンジ確保の観点からすると、かなり不利になる事は、いまから想像できます。

工夫
 電源にシールド付きのカットコアートランスを用い、安定化を二段、大容量のコンデンサーでリプルを排除した効果が得られて、良質な電源が得られました。その為に結構大型の筐体で、MSB社のMVCと同じ程度の大きさになりました。
 電源等を真面目に作ると、この程度の大きさは避けられない様です。
 又、コネクタ類は信頼性が高く、接点が銅製のオムロン製にしました。
DSC04030.jpg

製作での問題点
 実は、配線が大変でした。
 一度、Gothamのシールドケーブルで配線を行ったのですが、8チャンネル(16回路)分をシールドケーブルで配線したら、汚らしいジャングル配線となったため、再度単心線で製作しなおしました。

 単心線のシールド無しで、丁寧に配線しました。
XDSC04029.jpg

ロータリエンコーダを止めてポテンショメータにした理由
 リモコンのポテンショメータを入手して、動作確認まで行い、制御用に投入する予定でした。
 しかし、残念な事に、そのリモコン・ポテンショメータの動作が鈍い事と、バックラッシュが大きいので、取り敢えず止めました。リモコンは、別途検討して、それが上手く行くまでは、極普通の31φのポテンショメータを使う事にしました。

ロータリエンコーダの難しさ
 ロータリ・エンコーダのパルスとPGA2311のアッテネーション・ステップの比率が1:1の状態でPGA2311の-95.5dBから0dBまでの全アッテネーション幅255+1ステップをカバーするには256パルスが必要です。
 ロータリ・エンコーダは、1回転あたり10~32程度のパルスを出力するので、-95.5dBから0dまで制御するのに何回転もロータリ・エンコーダのノブを回すことになります。
 ロータリ・エンコーダを使う場合は、PICのソフトが加速型でプログラミングされてないいと使い物になりません。
 この部分は、電子ボリュームの肝の部分であり、それが良く出来ているのが、Jeff Rowland Coherence、Capriと言えます。
 ノブを回転する速度を検知して、アッテネーション・ステップ比率をダイナミック(動的)を変える必要があります。
 これは、リモコンのボタンを長押し、寸押しにより比率を変えるのと同様ですね・・

電源オンオフ時のノイズ
 電子ボリュームの電源を切らないで使う事になると思います。
 試しに、アンプ、スピーカー等を繋ぎ、最後に電子ボリュームの電源をオンオフとした場合の実験を行ったところ、気絶しそうな位のポップノイズが生じました。

 原因は、電子ボリュームチップに電源が投入されると 100msの間に出力は、ハイ・インピーダンスで、爾後 急にローインピーダンスになる事が解りました。この時、電子ボリュームの出力側のメインアンプの入力抵抗が高いと、インピーダンス変化により、DCアンプと同様にノイズが発生します。これを抑える為に電子ボリュームの出力と GND間に 数k ~数10kの抵抗を入れると小さくなると思われます。しかしこの方法だと、アンプの入力インピーダンスにより周波数特性が変化するので、ベストの方法と良いとは思えません。
 別の方法として、電源リセットIC M51953BL(ルネサステクノロジ)を用いて電源投入時より約1秒の間ミュート端子をLowとして回路が安定するまでPGA2311の出力を遮断する工夫が必要です。
 電源ONはこれで良いとして、OFFはどうしましょう。 年増の厚化粧 ・・・やれやれ。
 継電器は嫌いだし、困りました・・・

電子ボリュームのおすすめ度は・・・
 やはり、音にオペアンプの色が付きます。
 そこで、あくまで個人的な結論ですが、若し入手可能で有れば、多段のポテンショメータでは無く、アッテネータ(定インピーダンス)がベストだと思います。
 減衰のピッチが-2dBでも、回路を工夫すれば、幾らでも微調節が可能ですし、47ポジションのアッテネータも市販されているので、その様な選択もありかと思います。

次のステップ
 もう少し聞き込んで、良い結果が得られたら、高級なケースに納め直して、リモコン機能を付加します。
 忘れていたパイロットランプ(不要かも)、減衰量を数値で表示する表示パネルを設けます。
 駄目でしたら、お祓い箱・・・・で、電源は3Wayアナログ・チャンデバに転用します。
 
測定結果と考察
青が入力側、赤が電子ボリュームの出力側です。
1000Hzの矩形波は、特に問題ありません、この周波数で違いが生じたら使い物になりません。
1Kt.jpg

50kHzの矩形波ですが、これも特に問題無い様です。
50K.jpg

20Hzの正弦波ですが、多少位相のズレが生じていますが、問題無い範囲と思われます。
20.jpg

 測定結果等考察すると、ハム等のノイズも乗らず、実用上、全く問題無いのですが、測定結果に表れない音質については、何とも言えない状況です。
 今回使用したオペアンプ(BB社OPA2134)の音が好みなので、程々に良い評価になりました。電子ボリュームチップは、CS3310等オペアンプ機能の無いものを選び、好みのオペアンプで低インピーダンスで、ドライブするのが、お勧めです。
 電子ボリュームチップは、抵抗アレーを電子的に切り替えるICですから、音への脚色は余り無いのですが、それをドライブするオペアンプが曲者で、総てがそれにより決定されます。無いのがベストです。
 若しチャンネルデバイダーの出力インピーダンスが十分低いのであれば、CS3310を用いてオペアンプ無しの構成にすると、良い結果が得られると思います。

 それから・・・作って解ったことですが、単体の電子ボリュームで、まともの物は、極めて少ないといえることです。