ピアノ生演奏 VS ハイレゾ再生

 2016年7月30日は、虎ノ門にあるB-tech Japanで催された、SKS Lab Hi-Res Experiment #1 「ピアノ生演奏」vs「ハイレゾ再生」聞き比べ“バトル”体験試聴会 というイベントに参加してきました。

当日配布されたブローシャ
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詳細な内容はここ

 オーディエンスの前で、生のピアノ演奏と、それを録音したものを続けて再生して、再生音がどこまで生音に迫れるかというイベントです。
 生のオーケストラと事前に録音したものを途中で、すり替えて再生するという事は、1947年(昭和22年)にRCA研究所オルソン博士がマサチューセッツ州のタングルウッドでオルソンアンプとコアキシャルユニット・システム RCA LC1Aを12セットをオーケストラの配置に合わせて並べて、オーケストラの演奏と切り替えて再生して、オーディエンスを驚かせたという逸話があります。今回、小規模ながら これを彷彿とさせるデモが行われました。但し、オルソン博士行った方法は、楽器の配置に合わせてスピーカーを設置した方法であり、今回はリスニングポイント(ピンポイント)で補正した方式なので、理論的には誤った方式です。その為に、スイートスポットは、ピンポイントでしか存在ぜすに、身動き(顔の移動)が出来なくなる方式です。これに似たシステムで、Audyssey ARC System 2 (Advanced Room Correction)が有名です。このソフトは、7~16カ所のリスニング・ポイントの平均値を求めて補正する方式で、残念ながらこれも良い印象ではありません。いずれも自動の補正のみで、業務用機器の様にチャンネル毎の補正が出来ないので、簡便な方式と言えます。

録音と再生システム
 録音は、アースワーク(EARTHWORKS)のマイクロホン(M50)2本をピアノの前に立て、録音機材は、RME fireface UFXを用いて、パソコンに取り込みます。それを再生する機器はは、S&K社のオーディオ装置で、パソコンを使った、チャンネル・デバイダーと、自動補正ソフト、8チャンネルのicePowerアンプです。
 スピーカーは、片チャンネル4本のウエーブコア製のアルミコーン・ミッドウーファーと、SEAS製の同軸2Wayコーンス・スピーカーの構成です。
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上:Seas Excel 5" Magnesium Cone Coax C16N001/F ×1
下:SB Acoustics SB17NAC35-4 6.5" Aluminum Cone Woofer×4

演奏曲と演奏者
 航(KOH)さんこと吉田文子さんです、演奏曲目は即興曲の様で、似通ったリズム、テンポ、メロディーで、単調で聴いているのが苦痛でした。
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使用したピアノ
 ベーゼンドルファー・インペリアルです、今回の演奏曲目には、一寸、重厚過ぎるというか、ヘビーと言った感じです。個人的にはヤマハのフルコンとか、可能であるなら先進的なファツィオリ(FAZIOLI)の方が演奏した曲に合っていたと思います。ちなみにベーゼンドルファー・インペリアルの上代は2,000万円超えとの事です。
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生の演奏に、再生音がどこまで肉薄しているか・・・
 デジタルイコライザーで補正を行っているので、音色はかなり近似といえますが、臨場感は、ほぼ近く、エネルギー感は全く異なります。言い表す適切な言葉が見つかりません。

今回の企画
 今回の様な催し物は、誤解を招くリスクがあります。オーディオという知的な楽しみを理解している方からすると、「良くここまでやった」という好印象ですが、オーディオではなく、音楽のみを嗜む方からすると、「ぜんぜん違うね」という評価になりそうです。
 比較的狭い空間で、ピアノだけでデモを行ったので、そつなくデモを成功裏に終えたと言えますが、これがもしも広い空間でオーケストラと競演をテーマとした場合は、全く別の評価になった事が想像されます。
 個人的には、チャレンジ精神と結果に対しては、大いに評価しています。

ベーゼンドルファーの鍵盤システム
 ショールームの片隅に鍵盤の駆動モデルが飾ってありました。とても複雑な動きをしますが、材料の木は想像とは異なり、水分を含んだ、結構軟らかい木材です。右の白いキィーを下げると、左のフェルトのハンマーが上にあがり、ピアノ線を叩きます。
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後で分かった事
 後日、スタジオ407酒井さんの録音した音を聞きましたが、とても良く録音されていました。当日会場でMPPで再生したとき、低音が膨らんでダブついていましたが、録音の問題よりも、再生システムに問題が有りそうです。又、再生中に「プツ、プツ」とデジタル・ノイズが聞こえましたが、スタジオ407の録音を聴く限りでは、その様なノイズは皆無でした。
 SEASのコアキシャルスピーカーに比べて、SBアコースティックの100Hz以下の切れが悪く、特にスピーカーを並列にドライブしているので、混変調が掛かり、音程が不明瞭に聞こえました。今回の主役は、S&Kより、スタジオ407で、録音の素晴らしさが光っていました。 

DIASOUL i の試聴会

 三菱電機に在籍されていた寺本浩平さんが、退職後に興された株式会社DIASOULというオーディオ・ブランドの第一作目のスピーカーとなる「DIASOUL 」を、九段下にある三菱グループのショールームにお伺いして聴かせていただきました。

株式会社DIASOUL

CESでの評価
 手作りアンプの会のKさんに紹介されるまで、このブランドの存在ついて全く知りませんでした。既にアメリカのCESで「Best Sound Show」を獲得した評価に加え、ユニークなスピーカーの外観でもあり、大いに期待して試聴させていただきました。

CESコンシューマー・エレクトロニクス・ショー (Consumer Electronics Show, CES)

スピーカーの外観
 寺本さんが開発された DIASOUL は、以下の写真の様な外観で、一寸見プラネタリウムの投映機の様な形で、かなりのインパクトがあって、ダイナソー(Dinosaur)に見えなくも無いです。
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構造
 このスピーカーシステムのクロスオーバー遮蔽特性をお伺いしたところ、ウーファーからミッドバス間は80Hz、ウーファーの口径が25cmで同じモデルを対向結合されておりウーファーは、300WのICEpowerデジタルアンプでドライブされている様です。
 キャビネットは異形密閉でDSPでバスブーストが行われていおり、その内部はドライバー毎に分かれている(独立空気室、デュアル・キャビネット)との事です。
 そのオプティマイズはキャビネットの背後にあるUSBポートからパソコンで行います。
 ミッドは16cmのカーボンケブラー・ダイアフラムで十数リットル異形キャビネットに収められて、ドライバー背後には、1.6kgのデッドマスを背負い込んで、バスケットの振動軽減を実現しています。

遮蔽特性
 ミッドとハイはパッシブネットワークで、12dB/Oct.近似バターワース(Butterworth filter)で周波数分割と周波数特性のイコライズをしているとのことですが、遮蔽の周波数については、最後まで語られませんでした。

トゥーイータ
 トゥーイータは三菱グループが開発した、炭化ホウ素 (B4C)の結晶・ボロン(原子番号:5、原子量:10.81、元素記号:B)のダイアフラムを用いた36mmφで、球体にダイアモンド状に四個配置した独特の形で、ほぼミッドバスの口径に合わせて配置されていることが、高域のエネルギーが一点集中することなく、ミッドと一体感をもって再生されている様に思えます。これを寺本さんは「パワード球面波」と説明されていました。
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競合商品
 このスピーカーシステムの外観が極めてユニークであることが、デザインに拘る購買層であるオーディオファイルの好みが分かれるところだと思います。
 アバンギャルド、B&Wノーチラス、ランシェ、又、レガシーなJBLエベレスト、TAD、アバロン等、なみいる銘スピーカーと、音質面、デザイン面、先進性で競合する事が想像できます。

肝心な音
 スピード感のある音です、特に低音はバスレフ等の共鳴を応用していないので、素直です。
 中高音は、力があり聴きやすく、高音のトゥーイータは、粘度の低い磁性流体を使っており低ノイズ・低歪で静かです。
 磁性流体を使っている事と、間隔が狭いもののトゥーイータを横に並べていることが、このシステムの音を決定付けている要因の一つと思われます。
 音の特徴は音場感より音像感にベクトルが合っており、スタジオ・モニター的な音でも無く聴きやすいです。
 又、クラシックよりジャズに向いている様に感じました。
 
 磁性流体:1960年代にNASAでPapellにより宇宙服の可動部のシール材や無重力環境での物体の位置決めに使用するなどの目的で研究・開発された。 磁性流体はここ

 素晴らしい音を聴いていると時間の経過が解りません、気がついたら二時間が過ぎていました。

SENNHEISER IE80の測定

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 ヘッドホン、イアホンの音と装着感が嫌いで、聴くことが無いのですが、SENNHEISER IE80をシリコン・ゴムで、Omnimicに連結して測定しました。
 だいたい、こんな方法で良いのか、解らないのですが、測定結果は、大きなかまぼこ形で、とても変です。
  

Dayton Audio OmniMic Precision Measurement System

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 これは、Omnimicです。
 この測定器の良いところは、極めて簡便に測定できる事です。
 そして、素晴らしところは、測定結果と聴感と一致して、改善策の方向付けが出来る事です。

ビクタースタジオを見学

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 N氏から情報をいただいて、神宮前のビクタースタジオを見学しました。
 ビクタースタジオは、心霊スポットで有名な千駄ヶ谷トンネルの出口の交差点にあって、 以前から窓の無いビルとして、気になっていました。

 当日は、ビクタースタジオのグループ長の秋本秀之さんに、マイク、大小のスタジオを案内していただきました。印象的な説明として、マイクロフォンの選択基準は、創作で求めている音色が最優先で、値段と性能だけでは無いとのことでした。

 ビクターは、44.1kHz/16bitでマスター録音を行っており、それを、K2Technologyと言う難しいシステムで、録音時に失った22kHz以上の音声信号をデジタル処理で、創り出すとのことです。
 ビクターにマスターとして保存してあるのは、フォーマットも16bit/44.1kHzで同じものでしかないので、K2HD PROCESSOR HDP-1126というDSPで、AES/EBUフォーマットでCD音源の16bit/44.1kHzを入れると倍音成分をシンセザイズして付加した上で、24bit/96kHzに変換された信号が出てくるので、それを「K2HD」として販売するとの事です。それらにより"K2Technology"で、JEITAのハイレゾ定義のクリアーを達成したのではと想像します。失った信号を生成する技術とは、どの様な工学的論理で行うのでしょう?
 K2HD PROCESSOR HDP-1126というDSPにCD信号をぶち込むと、打ち出の小槌の如く、ハイレゾ音源が生成されるのですね、これでは、創生ではなく生成だと思いますが・・・

 ビクターには、絢香、Kiroro等、歌謡曲の資産が膨大にありますが、レンタルCDのコピーでCDの売れ行きが、下降を辿っているとのこと、音楽の増売対策として、ハイレゾ(上記)のWeb販売に踏み切り、その販促とK2Technologyの味加減の確認を意図した、見学会でした。
 とても楽しく、有意義に一日でした。