手作りアンプの会の公認スピーカーの特性

 手作りアンプの会・備品スピーカーの特性
 冬のお寺大会の課題は「低音システム大会」であり、会のスピーカーの低音を増強するのが課題です。会のスピーカーの特性は、以下のグラフのマグネチュードで、70Hz以下が出ていません。スピーカーのパッシブ回路を調べると、インピーダンス補正回路が有ったり、スーパー・トゥーイータのレベル合わせのL-PADとか、セカンドオーダーのローカット・フィルターで構成されおり試行錯誤の跡が垣間見れます。スピーカーのキャビネットの構造は、ボッフル型という物で、会の大先輩のA氏が米国ハートレーの資料を参考に木工の専門家のY氏に製作を依頼して出来たものです。木工の作りは素晴らしいのですが、スピーカーの作りではなく、高級な家具作りの方法で作製されています。

第96回 関東三土会(2008年10月18日)から登場した標準スピーカー
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お寺大会の予告
http://tezukuri-amp.org/shibu/kantou/otera/2017winter/annai/index.html

FE167Eの仕様、TSパラメータ等
http://diyaudioprojects.com/Drivers/FE167E/Fostex-FE167E-Fullrange-Speaker-Datasheet.pdf
フォステクスは、日本ユーザーに対して上記ほどの仕様を開示していません。

測定データ
 手作りアンプの会、ケンさんが、川崎市の玉林寺で測定されたデータを、国際規格・IEC263準拠のグラフで表したものです。軸上距離約1.5m高さ90cm,、天井高3mの和室で、襖と障子の作りです。70Hzの歪は10%程で、真空管アンプにピッタリです。
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ボッフル(Boffle)キャビネットのルーツ
 米国ハートレー社の製品でhartley concert master VIに生かされたテクニックで、スピーカー背面の音エネルギーを箱の内部に同心円状に穴をあけたニードルフェルト(Needle Felting)を間隔をあけて5~6枚配置します。これは、音響凹レンズ役目をして、音を拡散と吸収するという方法と思われます。この方法は、小型のスピーカーより、hartley concert masterの様に巨大なキャビネットで、巨大なウーファーを用い、後面開放を実現する85年前の古典的な手法です。
Cross-section of Hartley "Boffle" 1932年7月 USパテントはNo. 1869178,で既に失効しています。
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低音増強の構想
 測定したグラフを見ますと、70Hz以下のマグネチュードが異常に低く、200Hzから600Hzで、サブコーンの逆位相振動によるディップが生じています。この癖の有る特性の150Hz以上をLC回路で減衰させて見かけ上フラットとするする方法を考察します。中高音を減衰することによって、相対的に低音増強するために、スピーカーの能率が100dBから80dBに減衰しますが、強力な半導体アンプでドライブして解決することとします。
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こんな柔なスピーカーで低音がでるか?
 ホステクスのFE167Eといスピーカーは、コーン紙が芭蕉布(ばしょうふ)が含まれる植物繊維で出来ていている様です。そんなバナナ・・・ それが理由で全音域で分割振動が生じて、分割振動を避けて、剛性の高いコーンで、気体の移動量で稼ぐ近代的なウーファーとは異なります。低音が出たとしても、歪率特性の悪い低音が生じると思われます。
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ボイスコイルのインダクタンス等、データが開示されずに正当な値が記入されていません。
赤:位相特性、黒:インピーダンス、青:マグネチュード

マグネチュードの改善
 低音を見かけ上出す事の出来るパッシブフィルターを設計することにします。方法としては、キャビネット格納状態で、測定されたスピーカーのマグネチュード、位相、インピーダンス特性を用い、Speaker Workshop Version 1.06 というパッシブネットワーク設計システムに取り込み目標のマグネチュードになる様に、シミュレーション結果を考察しながら、クローズドループでLCネットワークの設計を行います。

補正のパッシブネットワーク
 LCの共振回路で意識的に、低域を通過させます、そのままですと、中高域がダラ下がりになるので、ハイパスフィルターでバイパスします、そのバイパス量を抵抗で調整して、見かけ上フラットらしき結果となります。
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シミュレーションの結果
 パッシブネットワークを用いて、実測したデータがどの様に変化したかをグラフで表します。黒がオリジナルで、赤が補正後です。相変わらず200Hzから600Hzのディプが有りますが、補正すると良化するものの、全く異なる音色になるので、低音増強の趣旨から外れるので、止める事にしました。
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製作したフィルター
 作ったという程の物では無いのですが、インダクター、バイポーラ・コンデンサー、抵抗で作製しました。
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実験
 実際に補正用のパッシブフィルターを作製して、10月の三土会で実験する事にします。恐らくインダクターのコア容量が少ないために磁気飽和を起こして、酷い音になる事が想定できますが、若し普通に聞ける様でしたら、拾い物です。世の中そんなに甘くないです、恐らく駄目でしょう。

スリーウェイ・スピーカーのパッシブ・ネットワーク

 スリーウェイ・スピーカーの場合、音質面ではマルチアンプでドライブするのがベストだと信じてきましたが、手軽に音楽を楽しむという趣旨では、パッシブ・ネットワークの方が優れていると思います。しかし、低域の分解能を期待すると、マルチアンプの方が、安直に優れた特性が実現できます。今回は、敢えて現状から得られるデータに基づき、パッシブ・ネットワークを設計して見る事にしました。ネットワークを構築するかは、得られた結果如何により考えたと思います。

測定に用いた機器
 測定ソフトとしてARTA、LIMPが考えられますが、操作ミスでサウンド・ボードを壊す可能性が有るのと、測定用の治具を準備するが面倒なので、Jigs and toolsとして OmnimicとDatsを用いて測定する事にしました。
Dayton Omnimicは、キャビネットに格納した状態で周波数毎の音圧(dBSPL)、インパルス応答、歪率、位相の回転を測定します。又、Dayton Datsは、キャビネットにドライバーを格納した状態でインピーダンス、位相特性を測定します。物理的な質量については、ドライバーにスケールをあてて計ったり、測定不能の場合はブローシャから数値をプロットしますが、可能な限り実測する事が好ましいと言えます。
ドライバー毎に可能な限り以下の項目を集約します。
  Maximum Excursion (XMax) mm
  Motor Stregth(BL)
  Maxmum Power(pe)
  Efficiency
  Piston Aria(Sd)
  DC Resistance(Re)
  Mechanical Q(Qms)
  Electrical Q(Qes)
  Total Q(Qts)
  Compliance(Vas)
  Voice Coil Inductance(Le)
  Voice Coil Series(Li)
  Voice Coil Resistance(Ri)
  Free Air Resonance(Fs)

ユニットオリジナルの測定結果
Original_Full.jpg
 各ドライバーの能率はL-PADで後々解決するとして、ドライバーの得意とする帯域をカスケード状に並べて、めのこで使える帯域を選びます。

インピーダンスと位相特性
 シミュレーションを行う場合、インピーダンスと位相の特性に関する情報が無いと行えません。
低域
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低域の位相角0°の位置(周波数)は概ね21Hz付近となっています。

中域
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古典的なスコーカーなので、インピーダンスのピーキング・ファクターが大きいです。本来はZobel Circuitによる補正( (Impedance Stabilization)が必要かと思われます。

高域
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意外とフラットでは無いです。

ネットワークの回路図
 Speaker Workshopを用いて、変則的な二次の回路を作成しました。インダクターのテンコ盛りで、切れの悪い低音で、音のスピード感が無さそうです。
低域~中期 600hz
中域~高域 2,200hz
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シミュレーションの結果
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 まあまあ、フラットです、7kHz付近のなだらかな山は、煩く感じる事が想定されます。又、250hz~700Hz付近の山も人間の声が被ってソノリティの悪化が想定できます。このあたりを対処しないと実用に供さないと思われます。

一次のネットワークとシミュレーションの結果
一次のネットワークを試して見ました、単純な割りに良い結果が得られました。この感じだと一寸歪っぽく感じますが、音場感豊かなクラシック向きと言った感じになると思います。やはりウーファーのブレークアップが気になります。
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考察
 シミュレーション結果から経験則では、取り合えずスリーウェイ・スピーカーとして動作しますが、回路定数を調整する必要があると思います。又、データ自体の取得が1mのニアフィールドの値ですので、聞く部屋の特性を考慮した後、好みの音まで持って行くには爾後に根気強く調整が必要です。最終的には、使う受動部品の特性により更なる調整が必要になる筈です。 残念ながら、音場感、リアル感については、アライメンの解決が出来て無い為、ドライバーの位置調整で行うしかありません。やはりデジチャンの方が歩がありそうです。

タンノイの不思議なスピーカーで音出し その2

 タンノイ製の不思議なスピーカーの音出しを町田のオフ会で行いました。
 キャビネットは容量が20Lのダブルバスレフ方式です、それに対してICT™ Inductive Coupling Technology方式の不思議なフルレンジの組み合わせです。
 キャビネットはCOGさん(オフ会の主催者)が用意してくれました。そのキャビネットに指定の試聴用のバッフル板に取り付けて試聴を行いました。 

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 音出しは、43平米の広さを有す音楽室で、音響条件が優れた防音室なので、当然のことながら、バッフルステップによる低域の減衰が想定できたので、その補正回路を入れました。
 SpeakerWorkShopでシミュレーションを行い200Hzから-3dB減衰するバッフルステップ・コントロール(BSC)のLRフィルターを用意しました。
赤がオリジナルで、黒が補正後のシミュレーション結果です。
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 恐らく黒い線に近い状態で音が出ていると思いますが、大切な試聴時点の測定を、バスケットの鳴きで舞い上がり失念しましたが、次回は、デッドニングを行い、先ずは、バスレフのベントを調整して行うのが正当な方法だと思いますので、次回のオフ会では、ベントの調整を行い、そのうえで、試聴する環境に合わせたBSCの補正を考えたいと思います。

 肝心な音は、評判通りのドライバーで、中々良いバランスで、聞きやすい音でした。しかし、残念なことに、ドライバーのフレーム、防磁カバーの鳴きが酷く、再生を中断せざるをえませんでした。
 見かけは安っぽいスピーカーですが、一応 MADE IN U.K FOR TANNOY LTD.と記されており、聴いた音からすると、只ならぬスピーカーで有ることが想像されます。

  COGさん、何時も有意義で、濃厚なオフ会有難うございます。
 
 

パッシブネットワーク

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 マルチ・スピーカーの工程で、ネットワークの作製と調整があります。
 私の場合は、ここからが、いばらの道で、試聴と調整を繰り返して、ラビリンス状態になります。
 先ずは、マルチアンプとデジタル・チャンデバで、音の目標を定めて、それに近づく様にネットワークを調整します。
 しかし、最後は、調整の基準となる、マルチアンプの音に落ち着いて、ネットワークを投げ出してしまうのです。
 ネットワークの設計は、測定ツールで取得した、周波数特性、インピーダンス特性を、SpeakerWorksopと言うデザインソフトに取り込み、設計します。
 また、ここでも試行錯誤を行い、プチ・ラビリンス入りとなります。
 
 スピーカーを作製する上で、ドライバーは、単なる一つの要素であり、キャビネット、ネットワークのバランスが一番大切だと思っています。しかし、ドライバーは最終結果を形作る一番重要な要素でもあります。

 ・直流抵抗の少ない、インダクターを使う。
 ・コンデンサーは、FSのピーキングファクターで耐電圧を求める。
 ・抵抗は極力使わない、使う場合は、電力の大きい物をパラで使う。
 ・摺動抵抗器は使わない。
 ・コイルは、90度ずらして、相互の磁束の影響を避ける。
 ・コイルを固定する部品は、非磁性体を用いる。
 ・配線は可能な限り太いケーブルで行う。
 ・出来たネットワークは振動から避ける意味で、キャビネットに格納しない。


 

AccutonC50を用いた3Wayから2Wayへの試行

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 Scan-SpeakのIlluminatorシリーズのウーファーとトゥーイータを用いて、2Wayを構築しましたが、未だに満足な結果が、えられず、AccutonのC50、Discovery D7608で3Wayに発展させましたが、正直なところ、ますます迷宮入りで、落ち着いて音楽を聴ける状態ではありません。
 そこで、抜本的にシステムを再構築する事を考え始めました。
1.デジタル・チャンデバから、パッシブネットワークへ
2.デジタル・チャンデバから、アナログ・チャンデバへ
3.いっそのこと、フルレンジにして、総ての機材を処分・・・
4.身の回りの整理を兼ねて、オーディオからしばし遠ざかる。
 その前に、最後のあがきとして、2Wayでの最終チャレンジを行う決意をしました。
 それは、低域、中域の分割は、デジタル・チャンデバで行い、中域と高域の分割は、パッシブ・ネットワークによる、変則的な構成です。
 そこで、そのネットワーク設計の為に、Omnimicから実測データをSpeaker Worksopに取り込み、設計してみました。
 結果は、上記のとおりで、3.8kHzで、18dB/OCT.遮蔽特性ですが、500Hz~20Khzまで、フラットな特性が得られました。
 部品も手持ちの物にRCを買い足すだけで行けそうです。
 少々キバって高級なコンデンサーを投入出来ればと、思います。