ウーファーのフローティング化

 先日、オフ会でスピーカーについて、貴重なアドバイスをいただきました。それは、スピーカーのバスケットの振動が、50mmのブビンガ製のバッフル板を経由して、キャビネットに伝わり、混変調により音が濁るとのことです。解決策としてウーファーをフローティングにする事により改善されます。早速、フローティングにチャレンジする事にしました。

フローティング
 フローティングするドライバーは、ミッドローの15WU-8741T00とします。このドライバーの受け持つ帯域が、30Hz~700Hzで、主たる音域のほぼ中心にあたり、ソプラノの除く肉声の殆どが含まれて、多くの重要な音が含まれる帯域です。音の情報密度が濃いので、この部分の混変調を避ける事により、音離れ感とナチュラル感の両立が実現して、雑味のない滑らかな音に変化する事が期待できます。反面フローティングにより、過渡特性が悪化してアタック感が無くなる恐れがありますが、実験してみない事には解りません。取るに足らない心配である事を期待したいと思います。

改造
 フローティングは、設計当初から仕組みとして盛り込まないと、後の改造では難しいですが、今回は完璧を狙わず、「少しでもフォローティング」を目指してチャレンジしてみることにしまました。

方法
 以下の茶色の部分がバッフル板の木部です。元々、CNCで切削して高い精度が確保されているので、スピーカーのバスケット(アルミダイキャスト)と、それを固定するキャップボルト、鬼目ナット(グレー)とが直接接触しない様に工作されているので、ゲル状の緩衝材(シアン)と、シリコン製のOリングを入れることにより、簡易的にアイソレートする事が可能です。この様な仕掛けは、精度が高く取り付け穴の懐が深いドライバーで、初めて実現可能と思われます。
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キャップボルトにシリコンのOリングを取り付けて、締付けると螺子穴の中で広がって固定されます。
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制振シート
 医療関係で有名なソルボセイン(Sorbothane、オハイオ州ケント)のシートを購入して、リング状に加工して取り付けます。ソルボセインは薄くてもかなりの効果が有るようです。
 ソルボセインのURL
 https://www.sorbo-japan.com/industrial/industrial_use.html

シート厚
 スピーカーをバッフル板に落とし込んでいるので、座繰り加工がされていますが、フランジの厚さと座繰り深さの差が1mmなので、手始めに1t~1.5t圧のゲル・シートで実験する事にします。
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取り付け穴の加工
 以下の様に、フランジに4.2mmの穴が開いてますが、4mmのキャップボルトと接触する様でしたら、当該部分の穴を拡大する事で対処する予定です。

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期待する結果
 女性の声のかぶり、オーケストラの弦楽器の混濁した音が解決できれば成功です。

80cmの巨大スピーカーを聞く

 昨日は、台風22号が本州上陸真っ只中に80cmの巨大ウーファーを鳴らす企画がありましたので、群馬県伊勢崎市に行ってきました。大型ウーファーとしては、フォスター電機製フォステクスブランドでFW800HSという大型のウーファーがありますが、今回聴く事の出来るスピーカーは、三菱電機とNHKで共同開発した、ダイアトーン・プロフェショナル スピーカーシステムSC-8406Lです。
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SC-8406L
 ダイアフラムのダイアメータが80cmですから一般的にはサラウンド(エッジ)を含めると1mと言って良いと思います。インピーダンスが8オームで、耐入力が2kWもあります。ダイアフラムはケブラー製で、カーボンコンポジットか、塩ビか良く解りません。又、サラウンドが、ゴムホースの様で、軟らかくないです。
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NHKに納品
 NHKの放送を目的としたホールは、当初、愛宕山にあり、その後内幸町にNHKホールが設立され、そこも手狭となり、神南の現在のNHKに移りました。それを機会に、NHKホールにパイプオルガンが設けられ、そのオルガンは東独ベルリン・シュッケ製で世界最大弩級、ストップ数92、パイプ数7,640本、5段鍵盤を持つもので、パイプと電子オルガンのハイブリッド機構でした。そのハイブリッドの電子オルガンモードの演奏の時の低音を受け持つスピーカーの予定でした。予定と言う事で、最終的には担えなかったということです。15年前から演奏されなくなり、たまに、Jpopの録音、紅白歌合戦の蛍の光に使われる程度の体たらくです。

試聴の機器構成
 タンノイ38cmのコアキシャルスピーカーであるバークレーと50Hzでアクティブ・クロスオーバーで、分割して、200Wのアンプで聴きました。 音源は、CDをリッピングして、DDC経由でデジタルのまま、アクティブ・クロスオーバーに入力しました。
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肝心な音
 今まで聴く事が出来なかった重低音を聴かせていただきました。圧巻は、JAXAのH2ロケット打ち上げで、音源には、5hzの音と言うか空気の移動の風圧が含まれており、70坪の切り妻屋根の工場全体が、振動して、天井の電灯がカタカタと共振する程です。パイプオルガンの名曲のサンサーンスを聴きましたが、残念と言うか、当然ながら、本物のパイプオルガンとは、全く異なります。

最後に
 スピーカー自体の重さが200キロ以上もあり、移動が困難な為、この工場で箱を解体するとの事で、その雄姿の最後を見届ける事が出来て、貴重な体験が出来ました。


スピーカーの持つ素の特性を測定して、再検討

 スピーカーの持つ素の特性を測定して、クロスオーバーを再検討してみました。

ATC SM75-150 ダイアフラムの保護とホーン効果を狙ったWaveguide
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素の特性
 ウーファー(黒)Scan-Speak Illuminator 15WU/8741T00は、典型的な紙のダイアフラムで、近代的な設計の特徴のブレークアップが6khzから始まり、剛性の高さを現しています。トゥーイータ(青)Scan-Speak Revelator D2908/7140000は、チタンのダイアフラムながら、それ程高域が延びず、テキスタイルのダイアフラムの様に穏やかな特性です。スコーカー(赤)ATC SM75-150は、思ったほどフラットでは無く、古典的で使いにくい特性です。Waveguideによる位相の回転が800Hz付近に生じて、4,500Hz付近にエッジの共振(反転による打消し)による激しいディップが生じます。
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2Wayの検討
 元々、ウーファーとトゥーイータは、Scan-Speak推奨の組み合わせのため、測定結果の数値を見ると、クロスオーバーの周波数と僅かなゲイン調整で、綺麗に繋がる仕組みとなっています。その証拠が以下の特性で、クロスオーバーの周波数を決めて、トゥーイータのゲインを2~3dB SPL調整すれば、万事上手く行くように出来ています。
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3Wayの検討
 まともに動作する2wayに、無理してスコーカー加えて、しなやかに繋がっている竹に無理して木を間に入れる様です。スコーカーのATC SM75-150は、高音圧と分離を目的としたスタジオモニターの核となるスピーカーで、くつろいで聴くスピーカーでは無い様です。それでも何とか切り貼りして得られた結果が以下グラフです。800Hz付近では、一見レベル的には良さそうですが、スコーカーの位相が回転してウーファーとの繋がりが極めて悪い状態です。800Hz付近のクロスを避けて、48dB/oct.以上の急峻な遮蔽特性でクロスするか、あるいは、Waveguideを取り除いて800Hz以上の軸外応答の改善を行うか必要です。
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3Wayは必要か
 並みの3Wayより良く出来た2Wayの方が、点音源に近く、良い事が想像できます。そこで、良く出来た点音源の3Wayを検討してみることにしました。

久し振りにメイン・スピーカーの調整を行いました。

クワイエットパソコンが順調に稼動したので、スピーカー点検と調整を行いました。低域と中域のクロスオーバーを550Hzから大幅に変更して660Hzとして、中域と高域の3,080Hzは変更しないで調整を行いました。最近ATC SM75の低域の音が好ましく無い印象で、あまり低域を使わないように改めました。又、音圧を95 SPL-dBとして、埋もれた低域のクロスの状態をしらべました。

周波数特性
 中域のATC SM75下限のカットオフが甘そうなので、もう少しFIRフィルターのタップ数を増やして、36dB/oct.から48dB/oct.に若干ですが、遮蔽特性を急峻に改めて再調整が必要と思われます。SOXによるアップサンプリングを行った分のタップ数と遅延時間の調整は盛り込み済みです。
国際規格・IEC263準拠のグラフで表現(軸上1.5m)
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アライメント値
 各ドライバー(ユニット)のインパルス応答値の差から時間を求めてから距離に換算して、チャンネル・デバイダーの遅延値として設定して、測定位置でのスピーカーからの距離間が最小値(近似)になるように調整を行いました。
 遅延値(時間・距離)
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タイムアライメントの状況
 特に問題なくアライメントは取れている様です。FIRフィルターの優れている点として、総ての周波数帯域で、ピッタリと合っています。4.5ミリ秒(1.5m)一時反射が一寸キツイです。
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ATC SM75の問題点
 ATC SM75は、ショートホーンの為か音の存在感と支配力が強く、最近鼻について、もっと低歪の音が聴きたくなりました。予算の許す範囲内で、浮気をしてみたいと思います。アクトンのセラミックは、C50のヒステリックなバイオリンの音で懲りており弦楽四重奏が美しく、かつ優しく聴けるスピーカーが欲しいです。アクトンのダイヤモンドD50の様な音で、廉価なスピーカーは無いでしょうか?
 ある訳無いですね・・・・95から100 SPL-dBの音圧での調整は、煩かったです。丁度、地下鉄車内の音から電車の通過するガード下の音量だそうで、暫くの間、頭と耳が痛かったです。

手作りアンプの会の公認スピーカーの特性

 手作りアンプの会・備品スピーカーの特性
 冬のお寺大会の課題は「低音システム大会」であり、会のスピーカーの低音を増強するのが課題です。会のスピーカーの特性は、以下のグラフのマグネチュードで、70Hz以下が出ていません。スピーカーのパッシブ回路を調べると、インピーダンス補正回路が有ったり、スーパー・トゥーイータのレベル合わせのL-PADとか、セカンドオーダーのローカット・フィルターで構成されおり試行錯誤の跡が垣間見れます。スピーカーのキャビネットの構造は、ボッフル型という物で、会の大先輩のA氏が米国ハートレーの資料を参考に木工の専門家のY氏に製作を依頼して出来たものです。木工の作りは素晴らしいのですが、スピーカーの作りではなく、高級な家具作りの方法で作製されています。

第96回 関東三土会(2008年10月18日)から登場した標準スピーカー
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お寺大会の予告
http://tezukuri-amp.org/shibu/kantou/otera/2017winter/annai/index.html

FE167Eの仕様、TSパラメータ等
http://diyaudioprojects.com/Drivers/FE167E/Fostex-FE167E-Fullrange-Speaker-Datasheet.pdf
フォステクスは、日本ユーザーに対して上記ほどの仕様を開示していません。

測定データ
 手作りアンプの会、ケンさんが、川崎市の玉林寺で測定されたデータを、国際規格・IEC263準拠のグラフで表したものです。軸上距離約1.5m高さ90cm,、天井高3mの和室で、襖と障子の作りです。70Hzの歪は10%程で、真空管アンプにピッタリです。
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ボッフル(Boffle)キャビネットのルーツ
 米国ハートレー社の製品でhartley concert master VIに生かされたテクニックで、スピーカー背面の音エネルギーを箱の内部に同心円状に穴をあけたニードルフェルト(Needle Felting)を間隔をあけて5~6枚配置します。これは、音響凹レンズ役目をして、音を拡散と吸収するという方法と思われます。この方法は、小型のスピーカーより、hartley concert masterの様に巨大なキャビネットで、巨大なウーファーを用い、後面開放を実現する85年前の古典的な手法です。
Cross-section of Hartley "Boffle" 1932年7月 USパテントはNo. 1869178,で既に失効しています。
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低音増強の構想
 測定したグラフを見ますと、70Hz以下のマグネチュードが異常に低く、200Hzから600Hzで、サブコーンの逆位相振動によるディップが生じています。この癖の有る特性の150Hz以上をLC回路で減衰させて見かけ上フラットとするする方法を考察します。中高音を減衰することによって、相対的に低音増強するために、スピーカーの能率が100dBから80dBに減衰しますが、強力な半導体アンプでドライブして解決することとします。
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こんな柔なスピーカーで低音がでるか?
 ホステクスのFE167Eといスピーカーは、コーン紙が芭蕉布(ばしょうふ)が含まれる植物繊維で出来ていている様です。そんなバナナ・・・ それが理由で全音域で分割振動が生じて、分割振動を避けて、剛性の高いコーンで、気体の移動量で稼ぐ近代的なウーファーとは異なります。低音が出たとしても、歪率特性の悪い低音が生じると思われます。
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ボイスコイルのインダクタンス等、データが開示されずに正当な値が記入されていません。
赤:位相特性、黒:インピーダンス、青:マグネチュード

マグネチュードの改善
 低音を見かけ上出す事の出来るパッシブフィルターを設計することにします。方法としては、キャビネット格納状態で、測定されたスピーカーのマグネチュード、位相、インピーダンス特性を用い、Speaker Workshop Version 1.06 というパッシブネットワーク設計システムに取り込み目標のマグネチュードになる様に、シミュレーション結果を考察しながら、クローズドループでLCネットワークの設計を行います。

補正のパッシブネットワーク
 LCの共振回路で意識的に、低域を通過させます、そのままですと、中高域がダラ下がりになるので、ハイパスフィルターでバイパスします、そのバイパス量を抵抗で調整して、見かけ上フラットらしき結果となります。
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シミュレーションの結果
 パッシブネットワークを用いて、実測したデータがどの様に変化したかをグラフで表します。黒がオリジナルで、赤が補正後です。相変わらず200Hzから600Hzのディプが有りますが、補正すると良化するものの、全く異なる音色になるので、低音増強の趣旨から外れるので、止める事にしました。
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製作したフィルター
 作ったという程の物では無いのですが、インダクター、バイポーラ・コンデンサー、抵抗で作製しました。
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実験
 実際に補正用のパッシブフィルターを作製して、10月の三土会で実験する事にします。恐らくインダクターのコア容量が少ないために磁気飽和を起こして、酷い音になる事が想定できますが、若し普通に聞ける様でしたら、拾い物です。世の中そんなに甘くないです、恐らく駄目でしょう。