音場感の改善

 先日、目白のminnさん邸を訪れてRAALのダイポール特性のリボントゥーイーターを聴かせていただいてから、ダイポール特性の音が気に入りまして、何とか自宅で実現できないか悩んでいました。RAAL DIPOLE 140-15Dは予算的に簡単に入手できないので、何とか他の方法で近似の音が出せないか考えました。悩んだ末、ケンさん宅のシステムを思いだして、スーパー・トゥーイーターもどき追加による音場感の改善を行う事にしました。

音場感の改善方法
 以下の様に、休眠中のリング・トゥーイーターをMidの背後に反射を期待して備え高域が拡散するようにしました。トゥーイーターのドライブは高域のアンプから小容量で高域の特性が素直なムンドルフのフィルムキャパシター(MCap SUPREME SilverGold.Oil)1本で接続しました。
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位相とトゥーイーターの種類
 15,000Hz/-6dBの遮蔽特を期待して、1.5μfと1.0μfを用意しました。接続は現行のトゥーイーターにキャパシターを通してパラレル接続しました。位相に関しては、スピーカーの極性を変えても良く解りません、更に聞き込むと相違が解りそうです。初めにScanSpeak Discovery R2604/8320を投入しましたが、磁性流体の無いScan-Speak Illuminator R3004/662000の方が、音場感が豊かで効果に差があります。

肝心な音
 ダイポール特性のスピーカーまで行かなくとも、何とか音場感に変化を加える事が出来ました。この音場感の変化に相応しくない音源もあり、音が改善されたのか、はたまた改悪なのか良く解りません。変わった事は確かで、低音の切れが増して、聴いていて一寸楽しいです。高域が不必要に強調されたという感じはありません。
 
改善の向き不向き
 効果が得られた音楽は女性ボーカル系で、不向きなのは大編成のオーケストラ、教会音楽(オルガン)の様です。全く駄目なのは初めからエコーバッチリのJpop系でうるさく感じます。

今後の方針
 スーパー・トゥーイーターもどきの追加による音場感の改善を継続するか、否かは未定です。やはり一寸不自然な時があります。
 例えると、ESS TechnologyのES9018Sでエコー感が強調される様な感じです。次世代の ESS SABRE PRO Seriesは、結構太い音がして不自然さが改善されていますが・・・

ベントの測定と調整を行いました

 スピーカーのドライバーの入れ替え等を行い、調整を行ってきましたが、久し振りにベントの測定と調整を行いました。

 ベントを設ける場合、ドライバー(ユニット)"Q"とキャビネット(箱)の応答によって、ベントの長さと、その容積により最適解(Optimal solution)が存在して、それに可能な限り近づけられるか否かによりVented-box low-frequency system (バスレフシステム)の成否が決まります。更にその効果をより確かなものとする為に、以下の様に更なる工夫が必要です。

スピーカーのポート
 バスレフのベントを別名ポートと呼ばれ、またダクトとも言われます、本来の呼称はベントが正しく、ダクトとは、気体を運ぶ管であり、主に建築物内で空調、換気、排煙の目的で設備の事を言い、ポートとは外部との情報の受け渡しを行うためのインタフェースの事を言います。やはり共鳴管と背圧調整の主旨から、ベントが正しいと思います。

理想的なベント
 ベントからキャビネット内の空気が出入りするのですが、その時、異音(ブローノイズ)の発生を抑えて、スムースな動作が求められます。そこで、英国の某有名スピーカーメーカーのベントを見ますと、マグヌス効果を期待したディンプルが有ります。これは、ゴルフボールのディンプルと同じ考えで、極めて有効な方法だと思います。又、ベントのエンドは切りっ放しでは無く、フレアーを付けて、風切り音等のノイズ低減が必要です。更にベントの太さを一定とせず、テーパー (taper) 状として、歪み率の低減を行う工夫が必要です。ウーファー・コーン紙の裏側ノイズは極力前面に漏れない工夫が必要です。

ディンプル加工が施されているベント
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非対称でフレアーとテーパーのベント
この加工を施すと95dBSPLの音圧で、6dB程度のブローノイズの削減が期待できます。この辺は、数百年前に既にパイプオルガンで実現されていたノウハウの応用と言えます。
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実際の工法
オルガンの例
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自作のMTMスピーカー(可変長ベントで共振周波数を適切に変更ができます)
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フレアー部分を内部で強固に固定して、ベント自体の共振を避けます。
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測定結果(IEC263準拠)
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 軸上(1m)の音圧とベントの音を同じ音圧で測定しました。
 小口径のウーファーは、ベントから中音域の漏れが生ずるので、ベントは正面より、背面、又は下面が好ましい様です。又、中音域との干渉を避ける為に、少なくとも-48dB/oct.程度の急峻な遮蔽特性が必要です。小口径の場合、正面にベントを設けると、中音域での逆位相での相殺により中抜けの音となる可能性があります。
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 軸上で測定した90dBSPLの音圧でベント付近を測定した為、異常に高い音圧となってます。ベントからの音は強力な風が伴うので、正確に測定することは困難です。例えばスピーカーの後部のみを壁を境にして別の部屋で測定する等、工夫が必要かと思います。

トゥイーターから異音

 久し振りにメインのシステムを聴いたところ、トゥイーターから小さな異音が聞こえます。異音は歪んでいて、アンプが故障したのかと思い、アンプを交換したり、左右を入れ替えて再生しても、同じトゥイーターから生じるので、直ぐにスピーカーの問題で有る事が解りました。原因はどうやらボイスコイルとポールピースとが、ほんの少々摺れている様です。

検証方法
 早速、問題のトゥイーターを外して、インピーダンスと位相のデータを調べました。問題のあるスピーカーの場合、綺麗な曲線が得られません。調査はDats(Dayton Audio Test System)と言う測定器を使いました。

測定した結果
 以下の様に、綺麗な曲線ではなく途中にストレスがある事が解ります。
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修理方法
 過去にスキャンスピークのリングラジエータのダイアフラムを交換した経験があったので、構造は解ってました。スキャンスピークのRevelatorとIlluminatorシリーズのトゥイーターは、接着剤とか磁性流体を使わず、すべて精度の高い螺子とスペーサーで固定されている為に修理が容易です。但し、螺子は「いたずら防止ねじ」で普通のドライバーでは廻せません。以下の様な特殊ドライバーが必要です。
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 修理は、3本有る螺子の内、1本は固定したままで、2本緩めます。3本総て緩めると、不必要に位置がずれて調整に手間取るので、冷静に落ち着いて行います。2本緩めたところで、マグネットをほんの少々(針一本程度)ズラしたところで、Datsで測定します。それを3回繰り返す内に、コイルとポールピースが摺れない個所を発見することができます。そこで、素早く2本の螺子を固定すれば修理完了です。
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修理後の測定結果
 以下の様に新品を入手した時と寸分違わず同じインピーダンスと位相の特性が得られました。
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修理後の感想
 良いスピーカーは、修理もフィールドで可能な様に工夫されています。又、保守部品も揃っていて、結果として、廉価です。それから、Dats(Dayton Audio Test System)は、スピーカービルダーにとって、必須の測定器ですね。今日は気持ちよく音楽を聴けました。

スリーウェイ・スピーカーのパッシブ・ネットワーク

 スリーウェイ・スピーカーの場合、音質面ではマルチアンプでドライブするのがベストだと信じてきましたが、手軽に音楽を楽しむという趣旨では、パッシブ・ネットワークの方が優れていると思います。しかし、低域の分解能を期待すると、マルチアンプの方が、安直に優れた特性が実現できます。今回は、敢えて現状から得られるデータに基づき、パッシブ・ネットワークを設計して見る事にしました。ネットワークを構築するかは、得られた結果如何により考えたと思います。

測定に用いた機器
 測定ソフトとしてARTA、LIMPが考えられますが、操作ミスでサウンド・ボードを壊す可能性が有るのと、測定用の治具を準備するが面倒なので、Jigs and toolsとして OmnimicとDatsを用いて測定する事にしました。
Dayton Omnimicは、キャビネットに格納した状態で周波数毎の音圧(dBSPL)、インパルス応答、歪率、位相の回転を測定します。又、Dayton Datsは、キャビネットにドライバーを格納した状態でインピーダンス、位相特性を測定します。物理的な質量については、ドライバーにスケールをあてて計ったり、測定不能の場合はブローシャから数値をプロットしますが、可能な限り実測する事が好ましいと言えます。
ドライバー毎に可能な限り以下の項目を集約します。
  Maximum Excursion (XMax) mm
  Motor Stregth(BL)
  Maxmum Power(pe)
  Efficiency
  Piston Aria(Sd)
  DC Resistance(Re)
  Mechanical Q(Qms)
  Electrical Q(Qes)
  Total Q(Qts)
  Compliance(Vas)
  Voice Coil Inductance(Le)
  Voice Coil Series(Li)
  Voice Coil Resistance(Ri)
  Free Air Resonance(Fs)

ユニットオリジナルの測定結果
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 各ドライバーの能率はL-PADで後々解決するとして、ドライバーの得意とする帯域をカスケード状に並べて、めのこで使える帯域を選びます。

インピーダンスと位相特性
 シミュレーションを行う場合、インピーダンスと位相の特性に関する情報が無いと行えません。
低域
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低域の位相角0°の位置(周波数)は概ね21Hz付近となっています。

中域
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古典的なスコーカーなので、インピーダンスのピーキング・ファクターが大きいです。本来はZobel Circuitによる補正( (Impedance Stabilization)が必要かと思われます。

高域
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意外とフラットでは無いです。

ネットワークの回路図
 Speaker Workshopを用いて、変則的な二次の回路を作成しました。インダクターのテンコ盛りで、切れの悪い低音で、音のスピード感が無さそうです。
低域~中期 600hz
中域~高域 2,200hz
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シミュレーションの結果
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 まあまあ、フラットです、7kHz付近のなだらかな山は、煩く感じる事が想定されます。又、250hz~700Hz付近の山も人間の声が被ってソノリティの悪化が想定できます。このあたりを対処しないと実用に供さないと思われます。

一次のネットワークとシミュレーションの結果
一次のネットワークを試して見ました、単純な割りに良い結果が得られました。この感じだと一寸歪っぽく感じますが、音場感豊かなクラシック向きと言った感じになると思います。やはりウーファーのブレークアップが気になります。
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考察
 シミュレーション結果から経験則では、取り合えずスリーウェイ・スピーカーとして動作しますが、回路定数を調整する必要があると思います。又、データ自体の取得が1mのニアフィールドの値ですので、聞く部屋の特性を考慮した後、好みの音まで持って行くには爾後に根気強く調整が必要です。最終的には、使う受動部品の特性により更なる調整が必要になる筈です。 残念ながら、音場感、リアル感については、アライメンの解決が出来て無い為、ドライバーの位置調整で行うしかありません。やはりデジチャンの方が歩がありそうです。

フローティング・スピーカーの実験

スピーカーの据付方法
 スピーカーを据え付ける時、強固に固定する方法と、水面に浮くが如く擬似的に浮かす方法があります。強固に固定する方法として、基礎にアンカーボルトを打って、それに固定する方法とか、厚い石の上にワイヤーで固定する合理的な方法とか、様々です。一方、浮動(浮遊)の場合は、バネ、ワイヤー、ゴムひもで吊るして、擬似の浮遊状態を作り出します。又、これを実現する装置も販売されています。未だ、磁力で浮かす方式の物は無い様です。

音の変化の尺度
 据え付け方により、以下の様な音の変化がありますが、厳密には、使用する媒体の伸縮性・可塑性を定量化した物理量での評価では無く、単純に音を聴いた場合の一般論が先行して、理解し難い数式が後追いで添えられています。

・固定した音の傾向
  低音が出る
  アタック感が出る
  中途半端に行うと床鳴りがする
・浮動とした音の傾向
  低音の濁り(混変調)が減少する
  什器、床との共振による重低音が減少して軽く感じる
  パワー感が削がれた様に感じる(アタック感の減少)
  浮動化素材(スプリング、ゴム等)固有の音がする

スピーカー設置方法の再考
 今までは、スピーカー・スタンドとキャビネットの間に、ガラスのインシュレーター (insulator)を挟んで、三点支持を行ってましたが、低音の膨らみ、床、壁への振動の伝わり等から、低音に混変調歪が生じて、音が濁ってました。そこで、解消方法として、フローティングの方法を試す事にしました。
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フローティングの方法
 浮動装置を調べると、その殆どが、二次元動作に赴きを置いた物であり、上下(三次元)の浮動に対してそれ程優れてない事が解りました。又、鋼線とスプリングを使っている為、可聴周波数帯での共振(分割振動)が存在します。
 ※鋼線で吊り下げて、上下方向は板バネでダンピングしてます。
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 再生時にスピーカーキャビネットに手を添えると、前後に加えて上下の振動が、かなり有る事がわかります。それは、スピーカー・ドライバーが、バッフル板のど真ん中になく、上下にオフセットされており、ウーファーの中心分部に力点が集中するため、単純なピストン運動では無い事が推測できます。
 以下の様に、スピーカー(力点)が、重さの中心(支点)を中心に回転運動(作用点)となり、結果として回転運動に近い上下の振動が盛大に生ずる訳です。
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 そこで、既製品の二次元の移動に傾注したフローターから、極めて簡易な方法でかつ三次元のフローティングが出来る、ゲル状の緩衝材を置く事で、実験をしてみました。ゲル材の緩衝材は10mmの厚さがあり、耳たぶ程度の柔らかさのものを、少量置く事にしました。大量に置くとフロート動作がスポイルされます。
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肝心な音
 10hから50Khzに渡って、正弦波のスウィープを行いましたが、スピーカースタンドと床に振動が殆ど伝わる事なく、スピーカーの近くに置いてあった、オーナメントの共振も減り、充分期待できます。
 実際に音楽を聴いてみると、低音の純度が増しています。音の迫力は一寸減少していますが、明らかに低音の混変調は減少しています。これで、ミッドレンジスピーカーのフローティングと相成り、雑味の無い、アタック感のある音に調整できた様です。

歪率での比較
 音を聴いた感じでは、低音がスッキリした感じになりました。そこで定量的に歪率の変化を調べる事にしました。
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赤:音圧(平均92.5dB) 青:歪率(第二~第五高調の合計)

 結果、大きな数値の変化は見られませんでした、しかし、スピーカーに対する入力が同一ながら唯一明確な差として、50Hzの歪率がグラフで解る様に5dB程低くなっています。又、全体的に音圧が、周波数にによっては僅かですが、1.0dB~1.5dB程下がっています。周波数特性1.0dBの音の差は解りますので、この試みは成功と言って良いと思います。
 今回は歪率の差を調べましたが、加速度センサーを用いて、ホワイトノイズのスペクトラム変化状況を知るなど、より最適な測定ツールで、試してます。

フローティングの状態
 フローティングの結果は以下のとおりです。


今後の予定
 今のところ、良い結果が得られているので、この環境で聞き込んでみます。
 ちなみに、周波数特性は、イコライザーでの補正を必要とせずにフラットです。この状態で音楽を聴くと、自然でアタック感があります、そして煩く感じません。
 鋼線の吊り下げと板バネのフロート方式は、振動の内部損失を最適化すれば、結構簡単に作れそうなので、何れ作って実験して見ますが、恐らくゲル状の緩衝材を越える物は無い様な気がします。